世界の名馬列伝~天才と呼ばれた悲劇のヒロイン~
世界の名馬列伝~天才と呼ばれた悲劇のヒロイン~ 米国最強の称号を得た牝馬をご存じだろうか?デビューから無敗で米国三冠を達成。
しかし、獲得したトロフィーよりも、この馬のレース内容がその凄まじさを現している。10戦10勝、その全てがレコード勝ちだった。
米国史上最強の牝馬にして、米国史上最も悲劇とされたヒロイン。
その名は、ラフィアン。
名門牧場クレイボーン牧場で生を受けた彼女は、牝馬にしては雄大な馬格をしていた。そのためか、デビュー戦では太目残りとみられ、観客からの支持を得ることはなかった。
だがレースは、ラフィアンがスタートと同時に飛び出し、そのまま15馬身差をつけての圧勝。ダート1100mを1分5秒台と言う、とんでもないタイムを叩き出していた。
その後のレースも全て大差でのレコード決着。その活躍は、世代を超えて最強馬の象徴であるエクリプス賞の最優秀3歳牝馬を獲得した。
誰もが夢見たアメリカンドリーム。それは、4歳になっても輝き続けた。
圧倒的な力を見せ付けたラフィアンは、4歳になってもその力は衰えるどころかさらに輝きを増した。
エイコーンS8馬身、マザーグース賞13馬身とぶっちぎった。最後のCCAオークスは着差は2馬身半とちぎれなかったが、無敗のまま史上4頭目の米国牝馬三冠に輝いた。
その姿に、誰もが熱狂した。
その強さに、誰もが歓喜した。
世代最強となった彼女に、とてつもないレースの企画が持ち上がる。
奇しくも同じ年、牡馬の世代最強と呼ばれたケンタッキーダービー馬、フーリッシュプレジャーとのマッチレース。
牡馬と牝馬、どちらも最強と呼ばれる二頭によるマッチレース。
今までのレース内容と時計から、ラフィアン優勢の前評判になっていた。
全てのファンが見守る中、世紀のマッチレースのスタートが切られた。
そしてこれが、悲劇の幕開けとなる。
スタートで飛び出したのはフーリッシュプレジャー。今まで自分の前を走られたことの無いラフィアンが、初めて先行を許す形となる。
だが、負けじと追い上げるラフィアン。この時のラップタイムは、1F(200m)が11秒台と言う、目を疑いたくなるようなハイペースだった。
二頭が意地をぶつけ合い、ほぼ並走状態のまま1マイル(1600m)へと差し掛かる。
そして悪夢が牙を剥き、悲劇が起こる……。
手前を変えようとしたラフィアンがバランスを崩す。その瞬間、ラフィアンの歩様がおかしくなり、すぐさま競走中止。医師が駆けつけた。
種子骨粉砕骨折――
診断のためにラフィアンの肢に触った医師の手が、血で真っ赤に染まるほどの惨状。すぐさま予後不良の診断が下された。
だが、馬主の強い希望により、ボルトによる接続手術がその場で行われた。
手術は成功したものの麻酔が切れたラフィアンは、あまりの苦痛に耐えきれずにギプスを壊すほど暴れ回り、その時に肋骨を骨折。折れた骨が肺に刺さり、その場で安楽死の処置がとらた。
10戦10勝。
勝ったレースは全てレコード勝ち。まさに強いアメリカの象徴だった彼女。
その壮絶とも苛烈ともいえる生き様は、多くのファンを魅了した。
彼女は安楽死の処置がとられた後、ベルモントパーク競馬場の敷地内に埋葬された。この場所には、今も彼女の死を惜しむファンが花を手向けていると言う。
・馬齢表記
旧馬齢表記を適用しています。
・エクリプス賞
その年に活躍した馬を表彰するもの。細かく部門分けされている。
ラフィアンは、最優秀3歳牝馬と最優秀4歳牝馬の2度受賞ている。(2度目は死亡した年に獲得)
・マッチレース
2頭だけのレース。
ラフィアンの悲劇を機に、マッチレースは開催されていない。
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