諦めない強さ
諦めない強さ でっかい体をしながらも、地見走法と言われるぐらい、頭を低くして走る独特のフォーム。外見からは分らないほどのナイーブな心を持った馬。あまりの対比の激しさ、そして決して諦めることの無い強さ、その二つがファンの心を掴み、非常に愛された馬だった。
彼の名は、タイキブリザード。
雄大な馬体を持つ馬らしく、成長は奥手なところがあった。
デビューは4歳(旧馬齢表記、現在の3歳)の二月。大きな馬体と血統背景から、大物外国産馬と言われていた。
デビューから2連勝し、その後の重賞で2着を2回続け、その力の片鱗を見せる。
だが、彼はそれ以降、なかなか勝ちきれなかった。
重賞未勝利で、G1レースを好走するという能力の高さを見せるものの、それ以上の結果にはなかなか届かないと言う、なんとも残念な状態が続く。
結局、彼が重賞を初めて制覇したのは、デビューから二年後。ゴールまで追い込んできた馬に、何とか何とかのクビ差と言う苦しい勝利だった。
その後、G1安田記念に出走するも、ゴール間近でトロットサンダーにハナ差で差され敗れてしまう。
迷走だったのだろうか……それとも、必然性があったのだろうか?
今となっては何とも言えないが、彼はアメリカのブリーダーズカップに出走した。結果は惨敗だった。
帰国後、アメリカ遠征が想像以上に彼にダメージを与えた。現役続行不可能と思われるくらいにやつれていたのだった。
それでも彼は奇跡的な回復を遂げ、カムバックを果たす。そして、彼にその瞬間がやってきた。
G1安田記念。
三年連続の出走。昨年、目の前で逃したタイトル。
ステップレースをレコードで勝ち上がった彼は、単勝一番人気、ファンも何かを期待していたのかもしれない。
最後の直線、5番手から鋭い末脚を繰り出し、先頭のジェニュインに食らいつく。馬体が並んだ瞬間、鞍上の岡部騎手の鞭が入り、それに応えるかのように足を延ばしていった。
着差はクビ差。そでも、ようやく初のG1制覇を成し遂げた。
国内外合わせて7度目のG1挑戦で、ようやく彼は大輪の花を咲かせた。
能力があっても、それを開花させることは難しい。
どんなに頑張っても、結果と言うものが掌からすり抜けていく。
目の前から遠ざかっていく状態を何度も見せつけられていれば、心は削られて、諦めに身を委ねてしまいたくなる。
それでも、彼はただひたすらに勝利のみを信じて走り続けた。
その姿は、今でも胸が熱くなるのを感じる……。
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